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台湾の外国人介護労働者受入れ制度と日本への示唆

Author 戴 二彪
Affiliation Asian Growth Research Institute
Date of Publication 2024.3
No. 2023-14
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Contents Introduction

本研究では,1992 年から外国人介護労働者の受入れを続けている台湾に注目し,台湾の外国人介護労働者の受入れ制度,外国人介護労働者の規模の推移と特徴,および外国人介護労働者の受入れによる台湾の労働市場への影響を考察した。主な考察結果は次の通りである。①台湾における外国人介護労働者の受入れは,語学要件が設定されていないこともあって,短期間で実現できる。雇用期間は,最大で 14 年間が可能となっている。②外国人介護労働者の 9 割以上は家庭で,1 割弱は施設などで雇用される。受入れ規模は,COVID-19 パンデミックが発生した前の 2019 年までに拡大しつつあった。③23 万人(2023 年)を超える外国人介護労働者は,ほぼ全部東南アジア出身者で,その約 99%は女性である。出身国の所得水準・就職機会が高いほど,そこからの介護労働者における(34 歳以下の)若い女性の比率が低くなる傾向がある。④外国人介護労働者の名目賃金は,2020 年以降顕著に上昇している。⑤外国人介護労働者の受入れによる現地労働市場へのマイナスな影響はほとんどない。このため,通常は外国人労働者を受入れる際に「職業安定費」を政府に支払わなければならないが,外国人介護労働者を受入れる場合はこの「職業安定費」が免除されている。⑥供給が減速しはじめている外国人介護労働者の重要性が台湾社会に広く認識されている。行政当局は,雇用主に対して外国人介護労働者の労働条件の改善を要求していると同時に,多文化共生政策の推進に力を入れている。

アジアで先行している台湾の外国人介護労働者受入れ制度は,そのまま日本に適用することはできないが,受入れの仕組みとスピード,雇用期間と賃金水準の設定,外国人介護労働者の出身国構成・年齢構成の変化,多文化共生政策の推進,などについての経験と実践は,日本にとっても大変有益な参考になると言える。