刊行物
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執筆者 | 坂本 博 |
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発行年月 | 2007年 8月 |
No. | 2007-19 |
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本研究は分税制が試行された1994年以降の中国の財政データを用いて,省間財政力格差を分析したものである。記述分析からは,中央政府から地方政府への財政移転が省間所得格差を縮小させるには十分でないことが明らかになった。
一方で,財政収入の格差が深刻である。そこで包絡分析法(DEA)を用いて効率性の観点から財政力格差を計測したところ,効率的に収入が得られている省と非効率な省が明らかとなった。しかも非効率な地域が相対的に効率性を下落させている。この点は,統計的な仮説検定からも支持される結果となっている。
財政収入は税制といった制度的な枠組でも変わってくるだろうが,徴税能力も重要である。中央の取り分を多くし,財政力格差を補うべく地方への分配しているはずではあるが,これまでの分析で明らかになったことは,格差是正が不十分であるということである。これは中央政府の調整には限界があることを示す。となれば,地方政府は財政収入力を高める必要があるだろう。