執筆者 | 戴 二彪 |
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発行年月 | 2014年 3月 |
No. | 2014-04 |
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「改革・開放」以降の過去30数年間に,中国の投資環境には,様々な変化が起きた。こうした変化に伴って,中国に進出する日系企業の立地戦略(即ち立地選択行動)はどのように変化してきたのか?本研究は,中国における日系製造業企業の立地戦略の変化に着目して,1992年以前,1993~2002年,2003~2011年の3つの時期の産業別製造業企業の進出先分布を考察し,その立地戦略の変化の影響要因を分析するものである。主な分析結果は次のように要約できる。①1992年以前では,中国に進出した日系企業の主な進出先は遼寧省をはじめとする一部の沿海地域であり,「日本との伝統的な関係」(東北ダミー)や「日本との距離」(東部沿海ダミー)要因は,日系企業の立地選択の重要な影響要因であった。ただし,1993年以降,中国の対外開放の拡大と日中交流の増加に伴い,「日本との伝統的な関係」要因の重要性が大きく低下したとともに,「日本との距離」要因の重要性も減少している。②1993~2002年の期間では,中国経済の急成長と所得水準の上昇を背景に,中国に進出する日系製造業企業の市場戦略は,輸出指向型から輸出指向型と現地市場指向型の混在へ徐々に転換している。これに伴い,上海など経済中心都市への企業進出数が急増し,市場ポテンシャルを示す「地域所得水準」要因による企業立地選択へのプラスの影響が顕著に増大した。一方「土地使用代水準」要因のマイナスの影響も顕著となった。③2003~2011年の期間では,上海・北京など主要大都市における不動産価格の高騰の影響で,日系製造業企業が主要大都市よりもその周辺地域への立地を選好するようになった。このため,日系企業の立地選択において,「地域所得水準」は依然として重要な影響要因であるが,前の時期(1993~2002年)に比べ,そのプラスの影響が幾分弱くなった。④3時期のいずれにおいても,FDI累計額で示す「外資系企業集積度」は,概して日系企業の立地にプラスかつ統計的に有意な影響を与えている。ただし,他の要因と同様,その影響の産業間差異が存在する。中間投入財の種類が相対的に少ない食料品製造業などと比べ,電気,機械,化学,繊維などの業種の企業立地において,「外資系企業集積度」要因による影響がより顕著である。