刊行物
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執筆者 | 岸本 千佳司 |
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発行年月 | 2015年 1月 |
No. | 2015-01 |
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台湾は国際的に見てもベンチャーキャピタル(VC)業の活発な国とみなされている。実際,1990年代後半,台湾のVC業界は,成長期にあった半導体・IT等ハイテク産業へ遊休資金を集中投下してそれを助け,そのことでVC業界自身も急成長を遂げた。しかし,2000年代以降は,投資金額・案件数およびVCファンドの新設数も以前のような右肩上がりではなくなった。近年は,投資金額・案件数の激減,資金調達の困難さ,海外資金の流入の少なさ,初期ステージ企業への投資比率の低さといった諸問題が表面化している。こうした1国(あるいは1地域)のVC業の発展を左右する要因,とりわけ政府の役割について探究することが本研究の課題である。分析の結果,台湾のVC業の発展は,当初は政府主導であったが,政府介入は民間VC業の発展を促す間接的な方法が中心であったことが判明した。またVC業の発展は,半導体・IT等ハイテク産業振興策とセットになったもので,当然,投資対象となる産業の盛衰と密接にリンクしている。近年のVC業停滞も,成長性の高い新産業が十分勃興していないこと,および最近人気の文化創意産業やインターネット関連ビジネス等は比較的小規模・短期的な投資で賄える業種で,従来型VCよりも敏速で小回りの利くエンジェルやシードアクセラレーターが必要とされていることが背景にある。