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大都市への人口移動の決定要因としての地方人口と地域間所得格差

執筆者 八田 達夫, 田村 一軌, 保科 寛樹
発行年月 2022年 3月
No. 2022-07
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内容紹介

1960年代の日本の高度成長は、地方圏から大都市圏への大規模な人口移動を伴っていた。ところが1970年前後に急速に人口移動が減少すると共に、経済成長率も激減した。

当時の地方圏から大都市圏への人口移動のうち、中学校・高校の新卒者の占める割合は3分の1未満であり、20代、30代の移動も多かった。このため、人口移動関数の推定を15歳以上の各年齢層別に行った。結果的に、39歳以下の年齢層人口で、最も高い決定係数が得られた。なお、この年齢層の地方圏人口は、70年代を通じてほぼ一定であるので。地方圏人口の減少が人口移動減少の原因ではない。

1970年代において、この年齢層に人口移動減少をもたらした最大の要因は、有効求人倍率の地域間格差が縮小したことであった。二番目に大きな要因は、地方圏の一人当たり所得の相対的な向上である。さらに、地方圏の社会資本ストックの相対的な増加も貢献している。

次に、中学校・高校の新卒者に限定してこの回帰分析を行うと、短期的要因である有効求人倍率の格差縮小は、有意ではなかった。新卒者にとっては、地方圏の一人当たり所得の相対的な改善と、社会資本ストックの相対的改善が、移動のより大きな決定要因となっている。

さらに、本稿では、地方における一人当たり所得の相対的向上は、政策的な再分配によるところが大きいことも実証する。

現在、高度成長を経験している途上国では、その結果として生じるであろう地方への再分配の政治的圧力を、いかに抑制するかが重要であることを、この結論は示唆している。