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産業クラスターの発展と企業の戦略−台湾 IC 産業の事例研究−

Author Chikashi Kishimoto
Date of Publication 2009. 3
No. 2009-07
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Contents Introduction

本研究の特徴は、クラスター内の企業間関係(分業・協力関係と競争環境の両面)と当該地域に特徴的な企業の戦略との関連・相互作用に注目する点である。従来のクラスター研究では、クラスターが産み出す経済効果について、その有無や影響が、様々な地域の様々な産業の事例研究を通して分析されてきたが、企業レベルの戦略や経営努力について十分な注目がなされていなかった。クラスターの経済効果の幾つかは自然発生的に享受できるかもしれないが、その潜在的メリットの十分な発揮は、当該地域の企業が地域の産業資源を意図的に動員・活用し企業成長に結びつけるような適切な戦略を採用し実施することによって実現するというのが、本稿の基本的な主張である。逆に言えば、当該地域に蓄積された産業資源の特徴が、それに適合的な企業の戦略を促進し、それが特定の産業で競争力を獲得するために有利に働くとき、クラスターの効果が十全に発揮されたとみなせるであろう。単にクラスターの存在を指摘するだけ、もしくはクラスターが発揮しうるとされる経済効果をテキスト的に言及するだけでは、ある特定地域・国の企業がある特定の業界で特に競争力を獲得できた理由を説明したことにならないということである。

ところで地域の産業資源には物質的なものと地域の企業・機関間の関係性に埋め込まれたものとが含まれ、後者こそが地域の持続的発展を考察する上でより重要と考えられる。そこで、本稿では、クラスターに依拠した後発企業・地域の成功例として最も顕著なものの1つである台湾IC産業の事例を取り上げ、クラスターの企業間関係とそこに立地する企業の具体的な戦略や経営努力との関係を分析し、これら2つの要素間の相互作用が効果的に働き、台湾企業の成長と当該地域の発展ダイナミズムの向上に寄与したことを示してみたい。