Author | Chikashi Kishimoto |
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Date of Publication | 2010. 3 |
No. | 2010-06 |
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本稿は,台湾における創業・新事業創出支援体制を分析し,その特色と課題を明らかにすることを目的する。具体的には,台湾に多数存在するインキュベーションセンター(創新育成センター)とベンチャーキャピタルの活動を取り上げ,さらに政府系研究開発機関の工業技術研究院(ITRI)の役割に注目する。台湾に関しては,ハイテク企業の拠点として新竹等の科学工業園区の存在がしばしば言及されるが,それ以外にも,大学等付属の育成センターが台湾全土に100ヵ所以上存在する。そこでは,新規ベンチャー企業だけでなく,技術・経営改善を目指す既存中小企業等も支援対象とし様々なサービスを提供している。加えて,ベンチャーキャピタルの活動も盛んである。1990年代後半にハイテク産業の発展に大きな貢献を行い自らも急成長した当該業界は,2001年以降は勢いを減じたものの,最近に至るまで200社近いベンチャーキャピタル会社が営業し,ハイテクベンチャーの株式上場で,依然,重要な役割を果たしている。
このように台湾では,大学・研究機関,その付属の育成センター,およびベンチャーキャピタルという関連アクターの濃密な集積がみられるが,その中核を成すのがITRIである。即ち,ITRIは,独自のベンチャー・新事業育成施設である開放実験室/創業育成センターとベンチャーキャピタル子会社の創新工業技術移転股份有限公司(ITIC)を擁し,本業である産業技術の研究開発と合わせ,三位一体で台湾の創業・新事業創出支援体制をリードしてきた。
こうした体制で,情報処理,半導体等のリーディング産業の立上げと育成に相当の成果を収めてきた台湾だが,今後「アジアの創業センター」の地位を目指すには,ハイテクベンチャー活動でも次第に存在感を増す中国大陸との競合,育成センターのサービスと収益性の向上,ベンチャーキャピタルの資金源と投資先のさらなる開拓,そのための新産業の継続的立上げ,ハイテク産業以外の産業の底上げ等,重要な課題もある。