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台湾半導体ファウンドリの技術能力の研究

Author Chikashi Kishimoto
Date of Publication 2015. 7
No. 2015-13
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Contents Introduction

本研究の課題は、台湾ファウンドリ企業(主にTSMC、一部UMCを念頭に置く)の技術能力、具体的には、①柔軟・高効率の生産システムの構築、および②プロセス(関連)技術の開発について、筆者自身の面談記録や『公司年報』のような原資料を活用し、その詳細に踏み込むことである。

既存研究では、1990年代以降、台湾ファウンドリ(特にTSMC)が先発企業との技術ギャップを急速に埋めていったのは、半導体製造装置の大モジュール化・標準化が進んだことを背景に、こうした歩留まりが高く加工時間が短い最先端装置を積極的に導入したことによるところが多く、しかも、その資金的負担は台湾の投資優遇制度によりかなりの程度軽減されたということが指摘されている。

本研究は、それを重要な要因と認めつつも、その後の台湾ファウンドリ(特にTSMC)の持続的発展については、技術能力構築の独自の取組みがあったことを明らかにする。即ち、プラットフォーム戦略による多品種少量生産への対応、工場の自動化・ICT管理の活用、その前提の装置・ツール等の標準化推進、日常的な改善、経験・ノウハウの全社的共有の仕組み、研究開発と量産部門の連携による迅速なプロセス量産立ち上げなどである。また、プロセス関連技術でも、先端ロジックの1~3年ごとの世代交代実現、システムLSI向けのロジック以外の特殊プロセス拡充、近年の後工程・実装分野への進出と先端トランジスタ研究の実施などがある。しかもこれらの取組みが、専業ファウンドリというビジネスモデルの要請に沿って、技術的潮流の変化を踏まえつつ高度化する顧客ニーズを満たすために、全体最適化を考慮して進められてきたことを明らかにする。なお、技術能力の分析に際しては、藤本隆宏教授の「能力構築競争」の枠組みを参考にしそれを簡略化した形で、「表層の優位性」(生産性・品質・コスト管理や技術開発力、オペレーション能力のレベルの高さを反映すると思われる表面に表れた事象)と「優位性の土台」(表層の優位性の背後でそれを支える活動や仕組み、それに影響する事業戦略やビジネスモデル)の2層から整理した。